犬がだんだん年をとってくると、人間と同じように体にも様々な不調が現れてくることが多いです。
その中でも目の病気は、あまり目立った症状がないため、気づくとだいぶ病気が進行してしまっていることも少なくありません。
目の病気は発見や治療が遅れると、最悪の場合失明の恐れがあります。
そこで今回は老犬に多い目の病気や、治療方法についてお伝えします。
老犬になると注意したい目の病気
発見が遅れると失明してしまう危険性もある目の病気。そうならないために、飼い主さんが愛犬の異変に早く気づいてあげることが大事です。
犬の目をおびやかす病気には様々な種類がありますが、特にシニア期を迎える犬が発症しやすい病気には次のようなものがあります。
白内障
代表的な疾患として「白内障」が挙げられます。
白内障は、本来透明感がある水晶体がたんぱく質の代謝異常によって白く濁ってくるものですが、理由ははっきりとはわかっていません。
白内障には先天的・後天的なものがありますが、先天的な遺伝要因によるケースだと5~6歳未満で白濁が始まることもあるようです。
一般的には後天的なケースが多く、老化に伴い発症します。大型犬で7歳くらいから、小型犬では8歳くらいから目の白濁が始まりやすいといわれています。
白内障が進行すると視力が落ちていき、最終的には完全に目が見えなくなってしまうため、早期発見・早期治療が何よりも大切になります。
核硬化症
白内障と見分けにくい目の疾患に「核硬化症」があります。
核硬化症は、黒かった瞳が少しブルーっぽくなってくるという症状があります。
これは水晶体の中心の水晶体核という部分が、加齢に伴って圧縮されて硬くなり、青みを帯びてくるのが原因で、目が白く見えるようになります。しかし白内障のように目が真っ白になるということはありません。
また、核硬化症は高齢犬なら大半の子に症状が見られます。しかし進行は遅いので視力にあまり影響はありません。
ブドウ膜炎
「ブドウ膜炎」は白内障の併発疾患として多く見られます。
犬の白目と茶色の目の間のブドウ膜に炎症がおこり、痛みを伴います。炎症が網膜に影響を与え、視力の低下も招きます。
また、ブドウ膜炎は重症化すると眼圧が上昇して「緑内障」になってしまう可能性があります。
緑内障
人間でも見られる「緑内障」も、怖い目の病気です。
先天性による原発性緑内障では、高齢になると発症します。
原発性緑内障で犬種的に多いのは、柴犬、アメリカン・コッカー・スパニエル、シーズー等です。
後天性の続発性緑内障の場合は、白内障やブドウ膜炎等の合併症として起こることがほとんどです。
目の充血や、角膜の浮腫などが見られ痛みも伴います。痛みのために元気がなくなったり、食欲がなくなったりという様子が見られることも。
早期に発見することができると、適切な治療で回復する可能性がありますが、視力を失ってしまうと治療で治ることはありません。
治療方法は?
老犬になると発症しやすい目の病気には、早期発見が大切です。
しかし飼い主さんが気づいた時には、すでに病気が進行していることが多いです。
もし、目の病気が発見された時にはどのような治療が行われるのでしょうか?
白内障の治療
初期の段階では犬の行動にはあまり変化がなく、発見はなかなか難しいようです。
進行していくと視力が低下していくので、歩いている時に物にぶつかったり、つまずいたりします。いつも遊んでいたおもちゃを投げて見失ったりすることも。
白内障で一度濁ってしまった水晶体は元には戻りませんが、点眼や薬物治療で進行を遅らせたり、止めたりすることはできます。
上記の方法でも効果がない場合は、手術も視野にいれます。
手術内容は水晶体を人工の水晶体と入れ替えるもので、手術が成功すれば完治が見込めます。
核硬化症の治療
核硬化症は白内障と同じように目が白くなりますが、視力障害をおこすことはありませんので、特に治療はせずに経過を観察します。
発病の原因は亜鉛不足だと言われているため、亜鉛のサプリメント等を摂取すると、目の色が改善することもあります。
ブドウ膜炎の治療
ブドウ膜炎は白内障からの併発や、他の全身疾患からも併発することがあります。そして痛みを伴いますので、犬にとっては辛い目の病気です。
治療には消炎剤の点眼と内服薬を用いて炎症を抑える方法があります。放っておくと痛いうえに失明の恐れもある怖い病気ですが、上記の治療で早く治ることが多いです。
緑内障の治療
緑内障の治療方法は、急性なのか慢性なのかによって違ってきます。
急性の場合は視覚が温存できる可能性があるので、レーザー治療など、緊急の外科的な処置が有効です。
一方、慢性の場合は進行をできるだけくいとめることと、犬の苦痛を取り除くための治療になります。基本的には内科療法で、眼圧を下げるための点眼を行いますが、十分な効果がない場合は点滴や内服薬を併用することもあります。
すでに視力がなくなってしまっている場合では、徐々に目が飛び出すほど大きくなってしまう「牛眼」という状態や、逆にじわじわと目がちいさくなっていく「眼球ろう」という状態になることがあります。
このような状態になってしまった場合は、眼球内部のみをシリコンボールと入れ替える手術もあります。眼球摘出術と違い、外観をほぼ健康な時の目の状態に戻すことができます。
痛みや毎日の点眼からも解放されるので、手術を選択する飼い主さんも多くいるようです。
家の中で注意すること
目の病気にかかってしまうと、犬は日常に不便を感じたり、今まで通りに行動がしにくい場面が出てきます。
そんなシニア犬のために、飼い主さんはできるかぎり環境を整えてあげたいですね。愛犬が生活する家の中で、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか?
家具にクッション材を貼る
犬が高齢になると、視力が低下することで家の中でつまずいたり、物にぶつかったりすることがあります。
怪我を防ぐために、室内の角が出ている壁や家具にクッション材を貼る方法があります。
愛犬が足をとられないように床に色々と物を置くのも避けたいですね。
また、床で滑ったりすることもできるだけ防ぐために、フローリング等の滑りやすい床材は避け、じゅうたん等の滑りにくい床材にすることがおすすめです。
トイレの環境を整備する
目が見えにくくなると、トイレの位置の感覚もわかりにくくなります。
トイレの失敗を防ぐために、スペースを今までよりも広くしたり、数を増やすなどの工夫が必要です。
暗くてトイレを失敗してしまう場合は、照明をつけてあげると良いかもしれません。
まとめ
シニア期に入ると、犬自身も体が思うように動かないことを実感する場面も多くなることでしょう。
飼い主さんが気をつけていても、体や目が衰えていくことはある程度仕方がないことかもしれません。
しかしどんな病気も日々の健康チェックや病院での定期的な健康診断をすることで予防することができるでしょう。また老犬のために適切な環境を整えることも、愛犬が快適にシニア期を過ごすためには必要不可欠といえますね。